HOME「なぜ、上流の水の流れは透明なのか」



        >第5章「コンクリート護岸」(1/6)−第1節

「なぜ、上流の水の流れは透明なのか」



―河川上流中流の土砂流下と堆積の規則性を考える―

   第5章「コンクリート護岸」(1/6)-第1節
2024/05/25
2023/08/03,07/10  2021/03/13  2020/12/06,09/15,08/08,04/30,03/16
一部訂正

第1節「コンクリート護岸」とは

渓流で見た不思議な光景

 今から30年以上も前の事です。その頃、各地へ釣りに出掛けた時に、目的地へ至る途中の渓流で、時折、不思議な光景を見ることがありました。
 渓流の特定の狭い区間の河川敷に大きな岩が集中して幾つも集まっているのです。場所によってはそれらが積み重なっていることもありました。岩の大きさはその流れでは一番大きい位で、淵を形成するような大きな岩ばかりなのです。その数は、それぞれの場所ごとに異なり、少ない時で三つ四つ、多い時で十より少し多いくらいだったと思います。
  それらの岩はその大きさの全てを露わにして岸辺や河川敷にあり、あたかも誰かが何らかの意図を持って集めてその場所に置いたかのように見えました。大きな石や岩が、その全体を露わにして河川敷の特定の場所に集中して幾つもあるのは、それまでに見た事の無い光景でした。
 渓流にある大きな石や岩もその他の石や岩と一緒にあり、その底は他の石や岩や小さな土砂に埋まっている事が多いのです。そして、それらが狭い区域に集中している事も見たことはありませんでした。
 岩の大きさはそれぞれの渓流ごとで異なっていましたから、一抱えほどの岩が幾つか集まっていることがあり、飲料の自動販売機に近い大きさの岩ばかりが集まっている事もありました。
 その頃は、まだ「淵」の形成理由についてあれこれ思索をめぐらしていた時期でしたから、その奇妙な光景が気にはなったのですが、その原因を突き止めることは出来ませんでした。今にして思えば、もっと良く観察して、写真も撮影しておくべきでした。

 それらの渓流の規模はそれほど大きくはなかった事も思い出されます。その光景の多くは人家の近くにある渓流での出来事であったことも確かです。
 次の機会にその場所を訪れた時には、それらの幾つもの大きな岩は姿を消していました。自然の流水によって流下したのではなく、人為的にどこかへと持ち去られたのでしょう。
 今なら、なぜそのような現象が生じたのか説明出来るのですが、当時は不思議だと思うばかりでした。その現象の謎が解けたのは、「淵」の形成についておおよその事が分かった後からの事です。そして、その現象を説明出来る仮説の実際を確かめるまでには、さらに年月が必要でした。つまり、大きな石や岩がある実際の河川を継続的に観察する必要があったのです。

「コンクリート護岸」とは
 「砂防堰堤」の場合と同じく、上流や中流の「コンクリート護岸」も今から40〜50年ほど前から盛んに建設されるようになりました。
 コンクリート護岸は、水流に面した堤防や岸辺の表面をコンクリートで覆う工事で、水流の位置を定めその溢れを防いでいる堤防を護り、堤防自体やそれを形成する土砂が水流に浸食されないようにしています。
 その多くは土砂の表面をコンクリートで固めただけですが、場所によっては、自然石を積み重ねてコンクリートで固め、或いはブロック状のコンクリートを積み重ねる事もあります。いずれの場合でも、その表面がコンクリートで覆われているのが特徴だと思います。そして、新たに設置した堤防や以前からの堤防だけでなく、以前からあった自然の山際の岸辺をコンクリート護岸に整備することも多く行われています。
 現在では多くの堤防がコンクリートで覆われていますから、コンクリート護岸と堤防はほとんど同じ意味を表わしているようですが、厳密に考えると、コンクリート護岸と堤防本体とは区別する必要があります。
 昔は石や岩や植物や木材による護岸技術しか無かったので、堤防や岸辺が水流によって侵食されることが多くあったのですが、コンクリート護岸によって堤防や岸辺は強化され、増水の際に堤防や岸辺が浸食されることが少なくなり、堤防や岸辺が破壊されて発生する水害が減少したと考えられます。

 コンクリート護岸についてWEB上では、護岸工事の一つの方法として記述されている事が多く、コンクリート護岸をのみを記述する場合では、その技術的方法論の記述に限られている場合がほとんどです。
 以下にWEB上での記載を引用掲載します。  

護岸工 (用語辞典より)
 護岸工. ごがんこう. 堤防、河岸が流水によって洗掘され、崩壊するのを防止し、保護するために堤防の法面、小段および河岸法面に設ける施設。また直接堤防を保護するために、堤防法面に施工するもので、単独よりも、床固め工とともに用いられることが多い。石積護岸工、コンクリート護岸工、コンクリート張護岸工、コンクリートブロック護岸工、枠護岸工、蛇龍護岸工等がある。
出典 国土交通省東北地方整備局河川国道事務所ホームページ「最上川電子大辞典」
URL:  http://www.thr.mlit.go.jp/yamagata/word/k/ko14.htm 
l018年11月22日引用

第5章 護岸工 第2節 2.2 種類の選定.
 一般に渓流においては、コンクリート護岸工、 コンクリートブロック護岸工又は石積み護岸工を計画する。ただし、石積み護岸工及びコンクリートブロック護岸工を用いる場合は練積みとする。空積み護岸は一般に渓流には不適当である。
 解説. 一般に渓流は流速が大きいため容易に基礎が洗掘され、また水流が土砂及び転石を含むことが多く護岸の受ける衝撃も大きいから、簡単な工作物ではすぐに破損する恐れがある。これを防ぐためにはコンクリート、コンクリートブロック又は石積みによらなければならない。〜
出典 鳥取県治山砂防課 砂防技術指針 第2編計画編第5章 護岸工
URL : https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1137670/2-5.pdf 
2018年11月22日引用

 コンクリート護岸の効用について否定するつもりは全くありません。特に下流域のそれは全く効果的方法であると考えています。また、上流や中流でも、コンクリート護岸が設置された場所が、水流による浸食や土砂崩れを回避しコンクリートによって保護されている事も否定できません。
 しかし、上流や中流の土砂流下と堆積の規則性を考えたとき、そして、河川流域全体と、コンクリート護岸の関係を考えた時、石や岩の多い上流や中流に設置するコンクリート護岸は全て間違いであると判断するしかないのです。コンクリート護岸は、治水にも自然環境にも不都合な状況を幾つも生じさせています。
 以下の記述は、それらについての説明です

                  

  次頁  第5章 「コンクリート護岸」(2/6)−第2節


  HOME「なぜ、上流の水の流れは透明なのか」




  >第5章「コンクリート護岸」(1/6)−第1節