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>(1)「コンクリート護岸の岸辺に自然の岸辺を取り戻す-流れに平行した護岸の場合」
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2023/05/07 2022/02/09、2020/04/10、2015/12/11一部変更
2015年8月20日掲載
(1)「コンクリート護岸の岸辺に自然の岸辺を取り戻す-流れに平行した護岸の場合」
(イ)新しい工事方法の設置場所
河川の流れと護岸とが平行している場所で洗掘が生じる場合に対応した工事方法です。
水流が直接に護岸にぶつかっている場所や屈曲部の外側や、橋脚等で発生している洗掘に対応する工事方法は(2)「コンクリート護岸に自然の岸辺を取り戻す・橋脚など水流が直接当たる場合」の頁を参照して下さい。
この工事方法は、河川の上流部や中流部では石や岩が多い事が普通であることを前提とした工事方法で、その設置場所を石や岩が無い場所にすることを想定していません。
河床や河川敷の土砂が、土や砂や小砂利ばかりの場所には適応が困難です。
ただし、現状で石や岩が無くても、過去にそれらがあった場合や、これからそれらが流下して来る可能性がある場合にはその建設も可能だと考えられます。
(ロ)この工事方法の特許申請について
この新しい工事方法は、特許を申請しましたが特許を認められませんでした。また、現時点(令和6年6月)では、その実施例はないと考えられます。
(ハ)新しい工事方法の根拠とその効果
新しい工事方法は、上流中流で実際に発生している土砂の流下と堆積の現象を考案の根拠としています。 特に、上流に至るほどその場所にある石や岩が大きくなる現象と、自然の岸辺やその近くにある石や岩が大きい傾向であることを重要に考えています。
新しい工事方法は、コンクリート護岸があるために流下し易くなった岸辺の大きな石や岩を、杭を利用して岸辺に止めることにより、 岸辺の侵食を防ぎコンクリート護岸以前の岸辺を取り戻すものです。
コンクリート護岸により、その近くの石や岩が流下し易くなったとしても、河川の上流ほど石や岩の大きさが大きく、数が多くなることに変わりはありません。 大きな石や岩ほど流れにくい性質も変わりはありません。 岸辺に大きな石や岩があれば、その岸辺が侵食され難いことも変わりません。河川の上流に石や岩が多くあり、それぞれの場所ごとにその大きさもその形も異なっていることも変わりません。 コンクリート護岸が出来て変わったのは、大きな石や岩がコンクリート護岸の岸辺にとどまり難くなったことです。
河川の上流や中流のそれぞれの場所にある大きな石や岩は、規模の大きな増水の時に限って流下して来たものであり、岸辺にある事が多いそれら大きな石や岩の周囲には、それらよりも小さな石や岩が堆積しているのが普通です。したがって、それら堆積した石や岩の周辺は侵食されることが少なくなっています。
これは、河川上流から中流に至るそれぞれの場所にある岸辺の大きな石や岩の全てについて言える事です。
この工事方法では、杭や柱を使用することによって、周囲にある中で大きめな石や岩を岸辺にとどめるようにします。 杭によってとどめられた石や岩が岸辺にあれば、増水時であってもその岸辺は、コンクリート護岸だけの場合よりもその流れが穏やかになります。
規模の大きな増水時に岸辺にまで流れて来た、大きくはない石や岩や他の多くの土砂は、大きな石や岩の間や周囲の岸辺にとどまり易くなり、水流や土砂が護岸を浸食する事も無くなります。
杭や柱によってその場所にとどめられた石や岩があり、それによりその他の土砂もとどまるようになれば、コンクリート護岸にまで水流が及ぶ増水であっても、
護岸の岸辺の水流が速く流れる事は無く、コンクリート護岸の岸辺が深く流れることも無くなります。
したがって、平水時に戻った時の水流はコンクリート護岸を離れて流れるようになり、河川の横断面は凹字型から岸辺が浅い自然なU字型に戻ります。
U字型に戻った横断面であれば、流れの場所も中央に集まり易くなります。上流からの土砂は水量に応じてそれぞれの場所に堆積して、河川上流や中流の自然な土砂流下が実現します。
岸辺の石や岩が安定してそれぞれの場所にとどまり続ければ、流れの中の石や岩も安定し、小さな土砂も含めて土砂の自然の流下とその規則性が復活します。
したがって、そこには「自然の敷石」も「 自然の石組」もより多く形成されるようになります。
この効果はコンクリート護岸のある場所だけに限りません。コンクリート護岸のない岸辺であっても 、杭によって岸辺に止められた大きな石や岩が、その岸辺の侵食を防ぎます。 ですから、岸辺の上部が崩壊斜面であったとしても、岸辺に杭によってとめられた大きな石や岩があれば流れに接した場所が侵食されないので、その上部の土砂の崩壊が続くことも少なくなります。
(ニ)新しい工事方法の実際
新しい工事方法では、大きめの石や岩をその場所に最初にとどめることを要求していますが、 杭や柱によって堰き止める石や岩の大きさを、数値によって規定していません。だからと言って、その石や岩の大きさが曖昧だということはありません。
河川で、上流に至るほど石や岩が大きくなっている事を正確に言うと、上流中流ではそれぞれの場所に数多くある様々な大きさの石や岩の中での大きな石や岩の大きさが、上流に至るほど大きくなっている、と言う事です。
この現象は、増水があっても大きな石や岩であるほど流下し難い事によって成立していると考えられ、それぞれの場所にある大きな石や岩は、時々の増水によってもそれ以上は容易に流下しないから、その場所にとどまり続けています。そして、上流から中流まで連続してこの現象が生じています。
規模が大きく水位が高い増水であっても、岸辺に近い程水流の速度が遅いのも自然の河川では普通ですから、大きな石や岩であるほど岸辺や河川敷に堆積し易い現象が生じています。
これらの現象により、とどめるべき石や岩の大きさを判断することは容易な事です。その付近の岸辺や河川敷に多くある石や岩の中で、他より大きめの石や岩を見つけるだけです。それら大きめな石や岩はそれぞれの場所で数が少し多めであることも多くあり、その場所が自然状態であれば猶更です。
この工事方法では、大きめの石や岩をその場所に最初にとどめることを要求しています。 これは、大きめの石や岩だけを最初に堰き止める事が出来たならば、それより小さな石や岩の大きさは無視して良いことも示しています。
大きめの石や岩を最初にとどめる事ができれば、それより小さな石や岩や小さな土砂は、増水になれば、最初にとどめた石や岩の上流側や下流側に自然にとどまることになるからです。
この工事方法で杭によってその場所に止める石や岩の大きさは「大きめな石や岩」であって、それが最も大きな石や岩であることは要求していません。 それらの石や岩が大き過ぎる場合では、
周囲の土砂の流下をさらに促進してしまう可能性もあります。
例えば、コンクリート護岸の建設後であっても、自然の大きな石や岩がまだまだ残っている場合があります。 そのような場合にそれらの中の最も大きな石や岩をコンクリート護岸の脇にとどめれば、その場所の洗掘の程度を強くするので、護岸の基礎が深く掘れてしまう可能性も考えられます。
逆に、コンクリート護岸の建設後に長い期間が経過した場所では、本来それらの場所にあったはずの大きさよりも小さな石や岩しか見つける事が出来ない場合が多くあります。
この場合では、周囲にある中で最も大きな石や岩であっても、それらがコンクリート護岸の基礎を侵食することは無いでしょう。
杭や柱によってその場所にとどめる石や岩の大きさは、それぞれの場所にある石や岩の中で大きめなものであれば良いのです。 工事によって杭が設置された場所に、規模の大きな増水の時でもそれらの石や岩がその場所に残り、なおかつ、増水の減水期にそれらの場所にその他の土砂も堆積するようになれば良いのです。
つまり、新たな工事の結果、コンクリート護岸の岸辺に自然の岸辺が新た形成されるようになれば良いことになります。
この工事方法は、コンクリート護岸のように連続して設置する必要はありません。 コンクリート護岸は水流に平行している場合が多いので、一か所で水流を弱める効果が生ずればその上流側や下流側にも効果が及びます。
ですから、この工事方法はコンクリート護岸の所々に設置すれば良いと考えます。これは、水量が多く川幅が広い河川敷ほど当てはまると考えています。
この工事方法を連続して設置した場合では、その場所に新たな洗掘が発生し易くなります。実際の河川でも、岸辺に大きめな石や岩が連続している場所は深く流れているのが普通です。
この工事を実施する場合では、杭を設置する場所だけでなく、その上流側及びその下流側の土砂の流下と堆積状況を観察して考慮する必要があります。 また、そのそれぞれについて、平水時の状況だけでなく増水時の事も考慮しなければなりません。
この工事方法は、流路の変化や川床の移動にも対応し易い方法だと言えます。年月の経過によって変化する岸辺に、その時々に応じて最適の工事をして、それを年月の経過と共に継続させます。
上流部や中流部では上流に至るほど石や岩の大きさが大きくなります。 したがって、新しい工事方法では、杭によって堰き止める石や岩の大きさは上流になるほど大きく、下流に近づくほど小さくなる事になります。
新しい工事方法は、河川の中流から上流に至るそれぞれの場所において対応できる方法であり、同時に、特定の河川に限らず河川の上流や中流であれば何処でも対応できる方法です。
(ホ)新しい工事方法での詳細の決定
新しい工事方法では、河川のそれぞれの場所において、その周囲にある石や岩の中から大きめの石や岩を選別することを要求します。 このことは、極めて重要な事柄です。
この工事では、それを設置する現場でなければ判断出来ない事柄を、その現場において判断する事を求めています。 新しい工事方法の理論を現場から離れた設計室で理解できたとしても、それを実際の工事内容に反映させることは出来ません。つまり、新しい工事方法は、現場から離れた設計室では無く、杭を設置する現場において作業する担当者が適宜判断することを要求していると言えます。
新しい工事方法は、それぞれの河川によって異なる様々な状況に対応出来るだけでなく、年月の経過ごとに様々に変化する土砂流下状況に応じて対応できます。 それは、新しい工事方法が、河川上流や中流の土砂の流下の規則性を理解して、それに対応して考案した工事方法であるからです。
(ヘ)この工事の特許について
この新しい工事方法は特許出願をしましたが、特許は認められませんでした。出願時の文書は「公開特許公報(A)特開2011−196129」として公開されています。この文書へは下記からリンクしています。ただし、文書に記載されている「特許請求の範囲」は特許出願時のものであり、実際の審査の対象となった「特許請求の範囲」とは異なっていますのでご注意ください。
*注意
特許の文書において最も重要な箇所は、「特許請求の範囲」【請求項】です。この部分こそが特許の本体であり、それ以外の記述や図面はそれを分かり易く伝えるための付属部分であると言っても良いかも知れません。
この特許の出願時の「特許請求の範囲」【請求項1】は、公開番号 特開2011-196129の記載のとおりですが、実際の特許の審査では以下の内容が審査対象になりました。
【請求項1】
岸辺から川の中央に向かって、或いは斜め上流又は斜め下流方向に向かって、
付近にある中で大きめの石や岩がその場にとどまる事の出来る程度で、なおかつ小さな石や岩が最初に止まることもない間隔をあけて、
単独又は複数の杭を埋設して、上流から移動して来る大きな石や岩を又は元々あった大きな石や岩を堰止め、その場にとどめることにより、
あるいは、単独又は複数の杭を埋設すると共に、大きな石や岩をまたは大きな石や岩に擬した人工の構造物を設置して、その場にとどめることにより、
新たな岸辺を形成し、それらを護岸の構成部分として機能させることを特徴とする護岸の方法。
上記の記載の中で下線の部分が当初の【請求項1】とは異なっている箇所です。
特許庁による特許公開文書 「特開2011-196129」 は、この番号をクリックするとPDFファイルとして開きます。
また、上記の【請求項】の文書も「特開2011-196129の追加文書」で開きます。
図面も良くご覧ください。簡単な図面ですが全体像が理解し易くなると思います。
この工事を実施される場合は、出来ればご連絡くださることをお願い致します。この工事方法の発案者として、工事の実際の効果について確認をする必要があると考えています。
実際の工事にあたっては、「なぜ、上流の水の流れは透明なのか」の第1〜3章と第5章をよくお読み下さい。。そこでは、この工事方法の基本的提考え方を説明しています。
もし、不明がありましたら、具体的状況等を明らかしてお問い合わせください。
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>(1)「コンクリート護岸の岸辺に自然の岸辺を取り戻す・流れに平行した護岸の場合」