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河川上流中流と海岸を回復させるための新たな工事方法

>(3)「石や岩の少ない河川で土砂の流下を押しとどめる方法」

河川上流中流と海岸を回復させるための

   新たな工事方法


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                            2015年8月20日掲載
(3)「石や岩の少ない河川で土砂の流下を押しとどめる方法」

(イ)新しい工事方法の説明
 この工事方法は特許を申請しましたが、既に類似の方法が知られていましたので、特許にはなりませんでした。 (公開特許公報(A)特願2013-221376)
 ですから、どなたでも自由に使用できる工事方法です。
 特許としては認められませんでしたが、荒廃した河川上流や中流の治水方法として有効な工事方法であると考えられますので、その詳細を説明します。

 この工事方法は、川床や河川敷などに残された石や岩を連結することにより、それらの流下を困難にし、それらによって人為的に「自然の石組」の形成を促進させます。

 この工事方法は、大きな石や岩が少なくなった岩盤状の河川であっても有効な方法だと考えています。 「自然の石組」が無くなったり、少なくなった川床や河川敷に、容易には流下しない大きさの石や岩が隣接した組み合わせを人工的に作り出して、 それらの石や岩による「自然の石組」を形成させます。
 それらの場所に適当な石や岩が無い場合には、自然石に似せた人工的な石や岩を用いることも可能です。 人工的であっても、その場所に「自然の石組」が出来れば、上流から流下して来る石や岩やその他の土砂がその場所にとどまるようになります。
 したがって、河川全体の土砂流下に良い影響を与え、それらの河川敷や河床が改善されます。

 この方法では、河川敷や河床に直接的な手を加えることなく、新たに流下して来る土砂を河川敷や河床にとどめる事が出来ます。 この方法では、大規模な機材の搬入は必要ないと考えられます。ですから、大きな工事機材の搬入が困難な上流部であっても、その設置が可能だと考えています。
  この方法は汎用性が大きく、周囲の環境に及ぼす影響も少なくて済みます。しかも、その効果も長期に及び費用も安価です。 たとえば、土砂崩れや斜面崩壊の後に堆積した土砂や、土石流の後の土砂などにおいても、土砂の急速な流失を防止するために有効な方法だと考えられます。

(ロ)石や岩によって形成される「自然の石組」
 「自然の敷石」状態は小さな土砂であっても形成されます。河川中流や上流の所々にある砂利や小石による「瀬」でそれを確かめる事が出来ます。
 それに対して「自然の石組」状態には、その場所に堰き止められる砂利や小石よりも大きな石や岩が必要です。 砂利や小石よりも大きな石や岩が隣接して、その上流側や岸辺側にそれらの石や岩よりも小さな土砂を堰き止めているのです。

 ですから、「自然の石組」状態は、「自然の敷石」状態よりも大量の土砂の流下を押しとどめています。 そこでは、周囲にある小さな土砂よりも大きな石や岩が隣接していなければ「自然の石組」状態は形成されません。 「自然の石組」はそれを形成している石や岩の大きさが大きいほど流下し難くなります。
 例えば中流域でも「自然の石組」を見ることが出来ますが、それらを形成している石や岩は小さなものなので、僅かな増水によっても容易に流下してしまいます。 それに対して上流域にある「自然の石組」では石や岩の大きさが大きくなるので、少しばかりの増水では破壊されません。

 つまり、大きな石や岩による「自然の石組」は、小さな石や岩による「自然の石組」よりも土砂を流下させ難いのです。
 河川全体の土砂の流下を考えれば、大きな石や岩による「自然の石組」の方が治水にとって有意義であることは言うまでもないことです。

 「自然の石組」を形成するのには似通った大きさの石や岩が隣接している事が必要です。 それぞれの石や岩の大きさに差異があったのでは「自然の石組」は形成されにくいことが考えられます。 河川のそれぞれの場所の水流の強さによっても流下しない大きさの石や岩が隣接している必要があります。 隣接する石や岩の片方が流されてしまえば「自然の石組」は形成されません。
 また、隣接する石や岩以外の石や岩の事も考えなければなりません。
 例えば、規模の大き増水によっても移動しないような石や岩が隣接して流れの中にあったとしても、 その周囲にあるその他の土砂が砂利や小さな石ばかりであったなら、そこには「自然の石組」は形成されません。
 容易に移動しないような石や岩が隣接している上流側には、その石や岩の狭間を堰き止めるだけの大きさの石や岩が必要なのです。 これらの状況は、河川の土砂流下が自然の状態であったなら問題なく実現されていました。

(ハ)この工事において考慮すべきこと
 この工事については以下の点を考慮すると良いと思います。

(1) 連結する石や岩の大きさは似通った大きさであることが望ましい。

(2) 近接した石や岩の連結によっても、それぞれの石や岩がそれぞれに可動出来る事。例えば、石や岩が鉄アレイ状に固定された場合ではその効果は多く望めないと考えられます。

(3) 連結には鉄などの一般的な金属を用いる事。金属であれば極めて長期的な効果が望めますが、プラスチック類や繊維ではそれだけの耐久性がありません。鉄などであれば、長い間には自然に腐食しますので自然環境に与える影響も僅かです。

(4) 人工的な石や岩を用いる場合では、それらの石や岩の形態を必ず自然石に似せて下さい。 球や立方体や直方体やそれらの組み合わせでは、上流側に土砂を押しとどめる効果が期待できません。

(5) どのような大さの石や岩を、どこに設置するのか。流れの中や岸辺にある石や岩の大きさの問題はHP上の論述をご参照下さい。

(ニ)特許公開文書について
 工事内容の詳細は公開特許公報にてご確認ください。

公開番号 特開2013-221376 をクリックして下さい。

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