>河川上流中流の現状とその回復>(A)「コンクリート護岸」の現状とその改善の実際
2022/01/04 新規掲載
2022/09/18、9/27 加筆訂正
2024/09/27 加筆訂正
この頁は、「コンクリート護岸」の現状とその改善の実際」について、実際の写真と詳しい説明を掲載しています。写真はクリックすると拡大します。
ポイント1. 安倍川玉機(タマハタ)橋上流左岸の状況。
*これらの写真は全て2021年10月撮影で、護岸全体の長さは300m程です。
ポイント2.西河内川(ニシゴウチカワ)腰越(コシゴエ)上流右岸の写真です。 *写真は全て2021年10月に撮影しました。
ポイント3.西河内川上流トンネル下の写真です。 *写真は、全て2021年10月の撮影です。
ポイント4.西河内川の下平瀬(シモヒラセ)左岸の写真です。
*幹線道路より上流側で長く続く大量の石や岩の堆積は、過去の規模の大きな増水時に出来た土砂堆積が水流により次第に浸食されている状況であると考えられます。丁度写真15で、河川敷の中州が水流により徐々に浸食されている様相を見る事が出来ますが、この左岸では、それよりもずっとずっと規模が大きな増水による土砂堆積が年月を掛けて少しづつ浸食され続けています。水流や雨水によって小さな土砂が流れ去った跡に残された石や岩の内で大きなものは重力によって下部に移動し、岸辺の下部には上流から流れて来た石や岩も堆積しています。それらの全体は自然堤防と呼ばれる状態です。
*写真11、19では、石や岩の斜面より上部に堤防を築きその斜面をコンクリートで覆っている様子です。つまり、それらの堤防は自然堤防の上に設置されています。これは、この場所の自然堤防の高さとその内側の平地の高さがほぼ同じ事からも言える事だと思います。
*この自然堤防では、大河川である大井川だからこそ出来た雄大な様相を見る事が出来るのですが、石や岩の大きさや量だけでなく、上流側と幹線道路に近い下流側とで堆積土砂の様相が随分異なってる事も特徴となっています。下流側では石や岩が多いのに、上流側では砂や小石や砂利ばかりになります。これは、周囲の地形によるもので、この上流側には巨大な屈曲部があり、それは山地の地形ですからその位置を変えることがありません。従って、規模の大きな増水時には屈曲部の内側の下流箇所は、水面が広がり水流が穏やかに流れて小さな土砂ばかりが堆積します。上流中流でも河川敷が広がった場所では、増水時の水流が穏やかに流れ、他の場所より小さな土砂を堆積し易いのです。
*この場所の問題点は、岸辺の浸食が年月の経過によって進行している事と、その傾向が近年ほど強くなっている事です。下流側から指摘してみます。先ず、写真6、7、11にあった道路真下の護岸前の石や岩の堆積は、写真13、16ではほとんど失われました。写真10、11にあった水底近くまでの石や岩の堆積も、写真16、17では見当たりません。写真2、9で見る分流箇所付近の土砂堆積量も写真28~32では随分減少しているようです。これらの状況を考えれば、この区域で今後、最初の課題となるのは幹線道路を支える護岸の維持の問題ではないでしょうか。
*写真6、7、11の石や岩の堆積があったから、岸壁基部の浸食が酷くならなかったのではないでしょうか。写真10、11に見る石や岩の堆積があったから、写真6、7に石や岩の堆積が堆積したと考えられます。また、写真10、11の岸辺近くの中州も上流側の土砂堆積があったかこそ形成されたのでは無いでしょうか。それらは上述した「ポイント4.西河内川下平瀬」の場合と同じであると考えています。
*また、写真26~28の水辺の樹木の問題も重要です。それらの樹木で根が地面からすっかり露出してしまった木々(シロヤナギ)のうちの幾つかは、コンクリート護岸の上に堆積した土砂に根を張り成長していたようです。なぜそれらの状況が生じたのかは不明ですが、木々の根が広範に伸長して周囲の土砂の流失を防いでいた事は確かです。写真からも石や岩を抱え込んでいた様子は明瞭です。
かつて、コンクリート護岸の設置のために堤防の木々は不要物或いは障害物として伐採されました。その工事方法は現在でも継続しているのでしょうか。アフガニスタンで中村哲先生は、多数の石や岩を垂直に積み上げた水路の岸に数多くの木々を植栽して岸辺の継続的存続を図っています。また、先生は取水堰の建設も、荒々しい自然のままの河川の護岸についても資材や資金が無い中で優れて有効な方法を採用しています。
石や岩の多い上流中流の河川工事においては各地に伝わった優れた工法がありました。中村先生の優れた方法は、それらの方法の応用ではないのでしょうか。しかしそれらの方法は、今迄、日本では全く無視され続けて来たのです。上流中流の河川工事に携わる全ての学者、官僚、工事担当者は、日本独自の工法や中村先生の方法から何も学ばなかったのでしょうか。間違えた工事方法を未だに改めようとはしません。何故でしょう、全く不可解と言うしかありません。
*参考資料 2016年 DVD「アフガニスタン用水路が運ぶ恵みと平和」日本電波社、ペシャワール会
*今迄の河川工事の考え方では、これらの場所には順次コンクリート護岸を設置し改修を継続させるのが最適であると判断される事でしょう。でも、その方法は際限のない河川工事の連続と作業量の増大化を招き寄せるだけです。コンクリートの耐用年数は河川の存続年月に比べてとんでもなく短いのです。50年ほど前から全国各地の上流中流に極めて大量に建設されて来たコンクリートの建造物の耐用年数が、近い将来にいっせいに訪れます。
既に人口減少時代に突入している現在、今後間違い無く発生し続ける膨大な河川工事を継続的に賄う事は不可能です。上流中流の土砂流下の規則性を無視した過去の河川工事が河川の流域全体に多くの不具合を発生させています。それらは、工事を行えば行うほど新たな工事の必要性を生じさせるモグラ叩きゲームでしかなかったのです。今迄の考え方を改めない限り不具合と災害は今後増大し続けるでしょう。石や岩が多い上流中流にコンクリート護岸を設置するのが全くの間違いである理由については、このサイトにある他の記述をご参照下さい。
*2010年以降に設置された写真16のコンクリート護岸は何を意図したのでしょうか。このコンクリート護岸によってその場の水流が加速され、それより下流側の石や岩が道路下の岸壁の基部に止まる事無く流下して行ったのでは無いでしょうか。岸辺や川底の石や岩が水流の流速を減少させる事は良く知られています。逆に、岸壁やコンクリート護岸が流速を早め、岸辺の石や岩を流下させる事も知られつつあると思います。
今後数十年の後、この護岸は風化して脆くなります。つまり護岸として機能しなくなります。規模の大きな増水になれば、コンクリートの全体が強い水流にさらされ浸食され水流の侵入を招くかもしれません。しかし、その時でも上流側に形成されている大小の石や岩による斜面の場所が浸食される可能性は少ないでしょう。自然石の強度はコンクリートと比べようが無い程に強いのです。それら多くの石や岩が水流を弱め自然堤防全体の強度を保って来たから、長年に亘ってほぼ同じ光景が継続していたのです。
水底に近い部分では石や岩が流れて行っても上流側から流下して来る石や岩がその場にとどまります。堤防の上部であれば、下部の石や岩によって水流が弱められますから、小さな石や岩でも護岸の役目を果たす可能性が大きいのです。つまり、この場所にある表面が石や岩ばかりの自然堤防は、その構造を継続的に更新し続けて来たと考えられます。さらに上部に木々や草々があれば土砂が浸食される可能性がより少ないと考えられます。
仮に、何年か後にこの護岸を再度コンクリートで建設すれば、同じ場所の斜面の維持保護が出来たとしても、現在と同じく石や岩を流下させ続けます。その時には現在見える下流側の大量の石や岩も消失している事もあるでしょうから、より広範囲にコンクリート護岸を建設する必要が生じるでしょう。
*ここに記述して来た間違えた工事方法を継続させない方法があります。それが、私が提案している自然の石や岩を岸辺にとどめる方法です。その方法は、コンクリート護岸を連続して建設するよりもずっと安価で済みます。その方法によって、この場所にも年月を経ても容易に破壊されない自然の岸辺が継続的に実現されると考えます。言い換えると、写真6、7、11の土砂堆積を取り戻す事は可能であると考えています。
*日本各地には江戸時代やそれ以前からの優れた治水施設があり、上流中流に限っても幾つも伝わっています。富士川の雁金堤や信玄の名を持つ幾つかの工事もそれらの内の一つです。ひるがえって、ここ五十年ほどの内に数多く建設され続けてきた上流中流の治水施設の中に、それらに匹敵する程の施設が一つでもあるでしょうか。それらのように後の世まで伝えられる施設や工事が一つでもあるでしょうか。全くの疑問です。それらのほとんどは、短い年月のうちに頻繁に造り直しまた追加工事の必要が生じています。さらに、それらによって上流中流で広範に生じている弊害もあります。それら近年の工事や施設の全ては、根本的に考え直す必要があります。
*なお、この場所で石や岩などの不都合な土砂の流失が生じているのは、全てが本来の自然現象であるとは言えません。この場所の上流にも、比較的近年に大きなダムが設置されました。そのダムでは貯水した大量の水を放流する際に自然の河川ではあり得ない程急激に放水量を増加させており、また、放水量を減少させる時でも自然ではあり得ない程に急激な水量の減少を生じさせていると考えられます。
自然の河川では降雨や豪雨による流下水量の変化があっても、それらの変化はダムの放流時や減水時に比べてずっと穏やかのものです。ダムからの放流は、上流中流にある全ての土砂に自然ではあり得ない状態での土砂流下と土砂堆積をもたらしています。ですから、日本中のダムの下流側では、水底と河川敷の土砂の不必要な流下と、より下流側の特定の区域に不必要な土砂の堆積が生じています。
ポイント6.足久保川(アシクボガワ)の支流に注ぐ細流の写真です。
ポイント7.瀬戸川(セトガワ)、寺島河川敷公園の様相。
2022年8月23日と9月3日の撮影、少し増水の様子です。写真はクリックすると別画面で拡大します。
*9月24日の記録的な降雨により付近の様相はすっかり変わりました。増水以前の写真の掲載を続けますが、新たな写真と説明は改めて掲載します。9月27日記す。
ポイント8.富士川支流 有無瀬川(ウムセガワ)。コンクリート護岸前から大きな岩が流下しました。
2023年5月から2024年12月までの撮影。写真をクリックすると別画面で拡大します。
>河川上流中流の現状とその回復>(A)「コンクリート護岸」の現状とその改善の実際